福島のニュース

<点検・再始動 復興の理想と現実>医療・福祉(3完)避難解除 福島の介護施設 運営縮小 採算合わず

舘山荘デイサービスセンターもとまちで手芸を楽しむ利用者ら。帰還住民の貴重な交流の場になっている=福島県富岡町

 福島県富岡町の「舘山荘デイサービスセンターもとまち」は、町内で再開したただ一つの高齢者向け介護施設だ。
 東京電力福島第1原発事故に伴う町内の避難指示は昨年4月、帰還困難区域を除いて解除された。もとまちは同時期に再開。古里に戻った高齢者に欠かせない存在になっている。
 「ここでおしゃべりをし、手芸をするのが本当に楽しい」。三瓶梅子さん(83)は週2回通うサービスを心待ちにしている。
 いわき市の仮設住宅から昨年10月に帰町し、災害公営住宅に入った。「1人暮らしで、話す機会が少ない」と打ち明ける。

<帰還町民3%>
 高齢者の暮らしを支える施設の実情は厳しい。利用登録者は当初の2人から14人に増えた。順調な滑りだしに見えるが、収支は赤字という。
 「原発事故前の利用は多い日で30人。当時の規模に戻らないと経営は厳しい」。佐々木郁子デイサービス課長が説明する。
 受け入れ規模拡大は容易ではない。避難指示解除から1年が近づくものの、帰町はほとんど進まない。居住を届けた町民は2月1日現在で429人。町人口の約3%にとどまる。
 人材確保にも腐心する。現在のスタッフ10人は全て正職員で、人件費がかさむ。需要と供給の歩調を合わせる模索が続く。
 帰町した住民の約4割は高齢者。佐々木課長は「思いの外、認知症の人が多い。まずは経営面の努力を重ね、現状のサービスを維持したい」と強調する。
 原発事故前より規模を縮小した福島県内の事業者は、収支バランスに悩む。
 楢葉町の避難指示解除から約半年後、2016年3月に事業を再開した町内唯一の特別養護老人ホーム「リリー園」。定員は44人と以前のほぼ半分だが、それすら職員不足で満たせない状況が続いてきた。

<国の支援期待>
 最近は求人活動が奏功して職員が増え、入所者が33人まで増加。年度内にも待機者(20人)の一部を受け入れ、定員水準に達する見通しとなった。ただ年間の損失が1億円規模という構造の改善は「簡単ではない」(永山初弥施設長)。
 政府は新年度、施設が必要な職員を確保し経営を安定させるまでのつなぎ資金として運営費を補助する仕組みを導入する方針。永山施設長は「国の運営支援には期待したい」と語る。
 楢葉町民向けの仮設・借り上げ住宅の無償提供は3月で終了。帰町者が増えるとみられる。
 「古里で安心して暮らしたい住民がいる。事業をやらない選択肢はない。職員を確保して受け入れを増やし、収支を改善したい」。永山施設長は被災地の事業者の思いを代弁するように力を込める。(いわき支局・佐藤崇、郡山支局・岩崎かおり)


2018年03月04日日曜日


先頭に戻る