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<新浜に吹く風>仙台・被災地の奮起/懐深い気風 そのままに

接客する鈴木孝博さん(左)と文江さん。新鮮な野菜を使ったランチが人気だ

 東日本大震災の津波被災地、仙台市宮城野区岡田の新浜(しんはま)地区で、新しい町のかたちが見え始めている。震災から7年。子どもたちの遊び場が完成し、市民農園、グラウンドゴルフ場などの事業がこの春、動き始める。七北田川に沿って泉ケ岳おろしが吹き、海寄りの風が強い新浜。現地再建を進め、交流人口の増加を目指す「風の町」を歩いた。(報道部・岡田芽依)

◎(中)模索

 「いつも風が吹き、土が身近にあるこの場所で、おいしい手料理を届けたい」
 鈴木孝博さん(50)と妻文江さん(47)は2015年、東日本大震災の津波で被災した仙台市宮城野区岡田の新浜地区にカフェ「風と手と土」を開いた。
 周りは田畑が広がり、復興工事の車両が行き交う。人通りは少ない。しかし、手間暇かけて作られた料理を味わおうと、県内外の客でランチタイムはほぼ満席になる。

<豊かな自然魅力>
 鈴木さん夫婦は裏磐梯(福島県北塩原村)でペンションやカフェを営んでいた。文江さんは新浜出身。震災直後、がれきが散乱し、変わり果てた故郷を目にして「生まれた土地を失いたくない」と思った。故郷を思う妻の姿に、孝博さんは新浜の実家跡地で店を開くことを決意した。
 裏磐梯は東京電力福島第1原発事故による風評被害が襲い、売り上げは10分の1に減っていた。更地のようになった新浜の地で、一からカフェを開いて客は果たして来るのか−。
 開店後、会員制交流サイト(SNS)や口コミなどで評判は広がった。裏磐梯の頃の常連客が宣伝してくれた。全粒粉の生パスタや蒸し野菜のビュッフェなど健康的なメニューで若い女性を中心に人気を呼んだ。
 仙台市郊外のおいしくて、おしゃれな店。「食べて被災地支援」とは違う文脈でカフェは当たった。
 文江さんは「新浜は自然が豊かな場所だった。お客さんに町の復興への歩みを見てもらいたい」とほほ笑む。故郷は疑いなく被災地のままだから。

<知恵絞る町内会>
 震災前は約150世帯が住んだ比較的小さな集落。住民のつながりは強く、地域活動が活発だった。アットホームな空気とまちづくりへの住民の情熱は、外部の支援や人を受け入れやすい土壌になった。世帯が半減した今も変わらない。
 一帯は開発を抑制する市街化調整区域で、住宅などの建設は容易ではない。それでも町内会は知恵を絞る。「点在する空き地に移住者を呼び込み、住民の増加につなげたい」
 いつかインフラ整備は終わり「被災地」の肩書は取れる。懐深い新浜の気風を生かしながら、復興後の姿を描く。住民の模索は始まったばかりだ。


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2018年03月05日月曜日


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