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<仙台市合併30年>泉・太白の今(下)秋保 交錯する光と影/G7では脚光も 過疎化懸念

秋保温泉であったG7会議。リゾートスタイルのコンベンション会場として世界にPRした=2016年5月、仙台市太白区秋保町のホテル佐勘

 雄大な自然や豊かな温泉に恵まれた仙台市西部の旧秋保町。30年前の合併が織りなす光と影が交錯する。

<観光地の厚み>
 合併後の秋保が最も脚光を浴びたのは、2016年の先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議。市の熱心な誘致が実を結び、秋保温泉が会場となった。
 「町のままだったら、対応できなかっただろう」。旧秋保町職員の佐藤光信さん(70)は感慨深げだ。
 各国要人の歓迎会で、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産「秋保の田植踊(たうえおどり)」を披露。保存会副会長として、地域の誇りを世界に発信した。
 <文化芸術のかおり高い国際的な観光・リゾート拠点として整備する>
 仙台市は合併建設計画書で秋保開発の方針を示した。「当時の思想は受け継いでいる」(市秋保総合支所)といい、G7開催は合併の果実だったとも言える。
 秋保には近年、観光農業施設「秋保ヴィレッジ」や県内唯一のワイン醸造所「秋保ワイナリー」など新たな魅力が加わった。手作りソーセージなど個性的な店の開業も相次ぐ。大都市近郊の地の利を生かし、観光地の厚みが増している。

<細る生活基盤>
 ただ、秋保温泉旅館組合の佐藤勘三郎組合長(56)は危機感を募らせる。「外から人を集めて活性化を図らないと、将来は厳しい」
 秋保の人口は合併当時の5051から、4123(2月1日現在)と約2割減り、高齢化率は市全体を12ポイント上回る34.8%(17年4月1日現在)。地場の商工業は寂れ、医療や公共交通などの生活基盤も細っている。
 「秋保の魅力は人の手が入った里山だが、このままでは消滅集落になる。観光業の持続も難しい」。佐藤組合長らは昨春、観光まちづくり会社を創設し、秋保の再生に奔走している。
 同時期に仙台市と合併し、人口増が続く旧宮城町、旧泉市と対照的な状況に、住民から「置き去りにされては困る」との声が漏れる。秋保が地盤の市議は合併の特例を除いて今まで一人もいないこともあって、みやぎ仙台商工会秋保支部の岡崎清治支部長(69)は「地域の声が行政に反映されにくくなった」と嘆く。
 最後の秋保町長、槻田信太郎さん(87)は「合併は仕方なかった」と顧みる。
 合併建設計画で町予算の約6年分に当たる120億円の予算が計上され、道路や上下水道の整備が進んだ。宿泊客で夜間人口が増える温泉街特有の懸案だった消防・救急態勢も整った。
 「昔は仙台との格差が大きかったが、住民生活は向上した。合併して、まるっきり悪くなったわけではない」と槻田さん。古里の行く末を静かに見守る。


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2018年03月03日土曜日


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