福島のニュース

<震災7年>福島の漁業再生流通が鍵 買い受け業者は供給過剰値崩れ警戒

値札を入れる入札も再開され、活気づく福島県いわき市漁協の沼之内支所魚市場=2月下旬

 福島県の漁業再生に向けた模索が続いている。東京電力福島第1原発事故から間もなく7年。試験操業による漁獲は増えているが、本格的な漁への移行には流通業者の復調と歩調を合わせる必要があるためだ。関係者は供給過剰による値崩れを警戒しつつ、海の正常化を目指す。
(南相馬支局・斎藤秀之、いわき支局・佐藤崇)

<漁獲量1割強>
 原発事故で福島県沖の漁業は全面休漁に追い込まれた。試験操業は2012年6月に始まった。17年の漁獲量(速報値)は3286トン。前年の1.5倍に伸びたとはいえ、原発事故前の1割強にとどまる。
 各港の競りによる魚価は堅調に推移する。17年9月の福島県漁連の調査で、主要10魚種で原発事故前を下回ったのは2種だけ。本格操業を議論する条件は整いつつあるように見える。
 だが、漁業関係者は慎重だ。東日本大震災では地元水産業者も深刻な津波被害を受けた。現在、競りに参加する買い受け業者は以前の半分以下にとどまる。「大量の魚を水揚げしても適正価格で取引してくれるのか」と漁師らは懸念する。
 県漁連の野崎哲会長は「業者の処理能力を超えれば魚価は落ちる。漁業者が漁獲高を増やそうとしても、流通面の事情で不可能になることも覚悟しなければならない」と話す。
 水揚げ分を引いた減収分は補償を受けられ、市場価格が漁業者の収入を左右するわけではない。しかし心情面への影響は大きい。相馬双葉漁協(相馬市)の担当者は「安値が続き、操業意欲が落ちる事態は避けたい」と明かす。

<風評も足かせ>
 水揚げの増大に向けては風評被害も足かせとなる。福島沖の魚介類の放射性物質を調べる県の調査で、国の基準値(1キログラム当たり100ベクレル)を超える検体は2年11カ月にわたって出ていない。県漁連も魚の出荷前検査を続けており、信頼向上の兆しもうかがえる。
 福島に水揚げされた沖合のイワシ、サバなどは「福島産」として県外にも広く流通している。イオンリテール東北カンパニー(仙台市)で水産物の責任者を務める相田隆宏さん(46)は「青物の大衆魚については消費者の受け止めが他県産と変わらなくなってきている」と指摘する。
 事業再生を急ぐ買い受け業者からは本格操業への早期移行を望む声も出始めた。取扱量が売り上げに直結するだけに、地場の魚が少なければ業績向上が見込めないためだ。
 相馬市で水産会社を営む高力秀明さん(66)も流失した設備を復旧したが、売り上げは以前の半分程度にとどまる。「まとまった水揚げがなければ大市場への売り込みもできない。流通と漁師の両すくみが続いていては展望は開けない」と嘆いた。


[福島県沖の試験操業]
小規模な操業と販売によって出荷先での評価などを調べるのを目的に2012年6月開始。安全が確認された魚介類が対象で、魚種は当初の3種から出荷制限10種以外の約170種に広がった。放射性セシウムについて県漁連は国の基準値より厳しい独自基準値(1キログラム当たり50ベクレル)を設定。東京電力福島第1原発の10キロ圏内は操業海域から外している。


2018年03月05日月曜日


先頭に戻る