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<再生に挑む>東北の被災企業[3]ヤグチ電子工業(石巻市)独自製品で窮地脱出

震災後に自社開発した医療機器などを手にする渡辺社長(中央)ら

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故を契機に独自製品を生みだし、最大被災地のものづくり復活をけん引する。

<安い線量計開発>
 2011年4月上旬、ヤグチ電子工業(石巻市)の佐藤雅俊専務(47)らは、東京から見舞いに訪れた取引先のエンジニアの応対をしていた。
 「安く手軽な放射線量計を作れないか」。食事中、誰かの問い掛けに全員が反応した。A4のコピー用紙を取り出して回路を描き、議論を交わした。約30分後、回路図が出来上がった。
 当時の国産線量計は1台数十万円。同社はこの回路図を基に試作を重ね、約2000円の線量計「ポケットガイガー」の開発に成功した。安いセンサーを使い、演算にスマートフォンを活用して価格を抑えた。
 同社は1974年、ソニーの協力会社として創業した。事業の柱は相手先ブランドによる生産(OEM)。受託製造を専門に音響機器などを手掛け、ピーク時の年商は3億円に上った。
 90年代後半、生産拠点が海外に移され、受注が大きく落ち込む。小口取引を集めて生き残りを図ったが、2008年にリーマン・ショックが襲った。最盛期には約150人いた従業員は、約20人に縮小せざるを得なかった。
 さらに震災が追い打ちを掛ける。沿岸部の取引先が被災し、受注量は震災前の半分に激減。売上高はピーク時の1割になった。
 窮地を脱するきっかけが、11年8月に初の自社製品として売り出したポケットガイガーだった。インターネットで発売されると、初日は30分で完売。これまで累計約7万個を売り上げるヒット商品になった。
 佐藤専務は「独力での商品開発は難しかったが、震災で出会った人たちのノウハウやネットワークが線量計にも、その後の開発にも生きている」と語る。

<隙間分野で勝負>
 14年9月には医療機器製造業の認証を取得。タブレット端末型の子ども向け弱視改善用訓練器「オクルパッド」や、小児弱視を早期に発見するための検査器「ポケモンステレオテスト」を開発した。
 17年5月期の売上高は約1億4000万円。自社製品が6割近くを占める。「柱はあくまでOEMだが、自社製品の販売で知名度が上がった。好循環が生まれ、受注も増えている」。本田裕二営業部長(53)は手応えをつかむ。
 渡辺俊一社長(66)は「中小企業が生き残るにはニッチな分野で勝負するしかない。特徴ある自社製品を送り出し、復興や雇用に貢献したい」と地場企業としてさらなる高みを目指す。
(高橋公彦)


2018年03月06日火曜日


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