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<再生に挑む>東北の被災企業[4]赤武酒造(盛岡市)若い力で時代捉える

移転再建した蔵の前で新銘柄「AKABU」を手にする杜氏の古舘龍之介さん

 東日本大震災で移転を迫られた酒蔵が生まれ変わった。販路は全国に広がる。

<支援の注文 減少>
 1896年創業の赤武(あかぶ)酒造(盛岡市)は震災前、岩手県大槌町で「浜娘」を醸し、地元で愛されていた。震災から7年。赤い武士のデザインが目を引く新銘柄「AKABU」が、首都圏を中心に高い人気を誇る。
 「震災を語らず、一から創業するつもりだ」。5代目の古舘秀峰社長(53)が、真新しい機械設備が並ぶ酒蔵で決意を込めた。
 大槌の酒蔵は津波と火事で全壊した。古舘社長は親戚を頼って盛岡市に避難。桜顔酒造(盛岡市)の酒造りに加わる形で2012年、浜娘の生産を再開した。
 地元では再建場所のめどが立たなかった。移転を決断して翌13年夏、同市内に土地を借り、国のグループ化補助金を活用して新工場を建設した。
 次の転機は14年春に訪れた。東京農大醸造科学科を卒業した長男龍之介さん(25)が入社。父からバトンを譲り受け、当時22歳で全国最年少の杜氏(とうじ)になった。異例の早期承継だった。
 浜娘の復活は話題となり、復興支援の注文が舞い込んだものの、売り上げは次第に減少していく。
 「浜娘が震災のイメージで知られ、悲しい味になることがマイナスだった」。古舘社長は新銘柄も考えたが、自身が培った南部杜氏以外の酒造りや、現代的な味には詳しくなかった。
 龍之介さんは、東京農大の先輩が醸す酒に憧れていた。父と酒を酌み交わし、「昔の味ではなく、時代に合った新しい酒を造りたい」と思いをぶつけた。

<販売 県外が7割>
 龍之介さんが醸した「AKABU」は震災のイメージから脱し、全国の酒蔵と同じ土俵で競う決意の表れだ。温度管理を徹底するため、酒を搾る部屋を冷蔵庫化しフレッシュさを追求。父から引き継いだ浜娘の純米大吟醸は15年度全国新酒鑑評会で金賞に輝いた。約20年ぶりの快挙だった。
 龍之介さんは「父にとっては賭けだったかもしれない。全て任せてくれた」と感謝する。
 販売戦略も見直した。酒質を重視する首都圏や東海地方の酒販店に飛び込み営業を重ねた。現在の販売先は県外が7割を占める。新工場5年目の今季に仕込んだ量は一升瓶(約1.8リットル)換算で10万本。震災前の1.7倍に達した。
 杜氏や蔵人(くらびと)は20代〜40歳と若く、機械に任せるところは任せる。勤務は午前8時〜午後5時、週休2日を実現。「ホワイト企業にならないと良い酒はできない」が龍之介さんの持論だ。
 「年ごとに酒質も評価も高めていきたい」。目指すのは日本を代表する銘酒。新生蔵の挑戦は始まったばかりだ。(高橋鉄男)


2018年03月07日水曜日


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