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<点検・再始動 復興の理想と現実>農水産業(1)石巻・カキ養殖 先細る人手 増産に影

石巻市の鹿立浜にあるカキ処理場。水揚げされたカキは手際良くむき身に加工される=2月16日

 「せめて2000トンまでは回復すると期待していたのだが…」。宮城県漁協の幹部はカキの生産量の変遷を示すグラフに目を落とし、つぶやいた。

<頭打ちの状態>
 県漁協によると、東日本大震災前は1シーズンで3000〜4000トン(むき身)を生産していた養殖カキは、2011年度に319トンまで落ち込んだ。被災した養殖施設の再生に伴い生産量を回復させたが、15、16年度は約1700トンで、頭打ちの状態が続く。
 最大の要因は担い手不足にある。カキ生産量と経営体数の推移はグラフの通り。09年度に894あった経営体は震災で激減後、回復傾向だったが14年度再び減少に転じた。微減が続き、16年度は434経営体にとどまる。
 生産者の高齢化と後継者不足は生産量に影響する。幹部は「正直、14年度以降の減少は想定外だった。生産者数を考慮すると、今以上の増産は難しいかもしれない」とこぼす。
 震災後、養殖業が盛んな石巻市の半島部では人口減少が加速。10年と15年の国勢調査を比較すると、雄勝地区は74.5%、牡鹿地区43.4%、北上地区37.4%それぞれ減った。
 カキやワカメなどは水揚げなど特定の時期に多くの人手を要する。震災前は近隣の親族や同じ地区の住民たちの手を借りて作業をしてきた。人口減少に伴うコミュニティーの弱体化が、浜の復興に影を落とす。

<「住む所ない」>
 牡鹿半島西部に位置する石巻市の鹿立(すだち)浜。13年に再建したカキ処理場は、殻をむく小気味良い音が響く。震災前と変わらぬ7経営体がカキ養殖を営むが、カキをむき身に加工する「むき子」の確保に苦心する。
 鹿立浜を含む県漁協石巻市東部支所管内は、人口が震災前の428から304(1月末時点)に減った。同支所運営委員長の石森裕治さん(60)は震災前、車で約30分の宮城県女川町に住む親族の男性に手伝いを頼んでいたが、男性は震災を機に転出。高齢も相まって継続が難しくなった。
 石森さんは16年から、東松島市矢本で暮らす別の親族の男性の手を借りているが、処理場までは車で約1時間。浜に下る道路は急勾配やカーブの連続で、降雪時などは出勤が困難だ。「1月に大雪が降った時は人手が足りず、作業が遅れた」と石森さんは嘆く。
 貴重な戦力として歓迎されるのは、震災を機に東京から石巻市に移住した赤間亜都沙(あづさ)さん(31)。市街地から1時間かけて通い、複数の浜でパートを掛け持ちする。「漁業者の人手不足の悩みは、7年たっても変わらない」と言う。
 石森さんはジレンマを抱えながら、浜の行く末を案じる。「担い手を育てようにも、この浜には住む所がない。外から来た若い人たちが暮らせる施設があれば可能性を見いだせるのだが」(石巻総局・関根梢)

 被災地の水産業や農業は、壊れた施設の復旧が順調に進んだ。だが、施設が再建しても人手不足や新たな課題に直面し、震災を克服できない状況がある。第2部は1次産業の現場で震災7年の課題に迫る。


2018年03月08日木曜日


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