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<再生に挑む>東北の被災企業[5]やない製麺(福島市) 福島産小麦で良品を

そうめんの箸分け作業をする社員ら

 東京電力福島第1原発事故で失われた商品に対する誇りを取り戻し、反転攻勢を始めた。
 1912年創業のやない製麺(福島市)は、福島県三春町に江戸時代から伝わる「三春そうめん」の製法を引き継ぐ高級乾麺を生産する。同県産や国産の上質な小麦を使い、コシの強さと味に優れ福島市民にとって定番の贈答品だ。アジアやヨーロッパの料理店に輸出もしていた。
 原発事故後、2011年4月上旬に営業を再開。当初不安視された売れ行きは、復興応援の需要で比較的好調だった。夏以降、福島県内の農産物からセシウムが検出されると売り上げは落ちた。
風評被害に苦慮
 風評被害が収束する気配は全く見えない。生き残るには、福島産の小麦を使わないことをアピールするしかなかった。包装に「100%オーストラリア産」と銘打ち、生産を続けた。
 「国産小麦さえ使いにくい状況。県産は諦めるしかなかった」。田倉悦雄工場長(58)は振り返る。
 それでも海外への輸出は激減。国内の百貨店からは、贈答品の広告掲載を取りやめるよう促された。12年のお中元売り上げは原発事故前より3割減った。
 贈答品としての商品特性が、風評被害からの回復をさらに困難にした。買って贈る側が理解していても、贈られた側がどう受け止めるか不安があった。実際、同社に小麦の産地について問い合わせがあった。
 箭内一典社長(63)は「贈られた人が嫌な気持ちになるかもしれないと思い、強く商品を売り出すことができなかった」と明かす。
 放射線量を検査して安全性を証明するしか手はなかった。原発事故から7年近くたち、地道な取り組みがようやく奏功し売り上げは次第に回復。だが、事故前の水準には戻っていない。
 一方で県内の放射線量は落ち着き、風評被害も以前より強くなくなった。箭内社長は原発事故後から続けた自粛をやめ、積極的な事業展開に踏み切った。
商品開発に着手
 今年1月、県産小麦「ゆきちから」を使った商品の開発に着手した。コープ東北サンネット事業連合(仙台市)などが出資する東北協同事業開発(同)のブランド「古今東北」のシリーズとして売り出し、新たな市場獲得を目指す。
 箭内社長は「自粛に耐える時期はもう終わった。商品で安全性を示さなければ風評はなくならない。県産食材を堂々と使い、良い商品を作ることがわれわれの役割だ」と力を込める。(北村早智里)


2018年03月08日木曜日


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