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<点検・再始動 復興の理想と現実>農水産業(2)大船渡・水産加工場 不漁続けば廃業危機

イサダの水揚げ。主力魚種の不漁が、震災から立ち上がろうとする浜の足をすくっている=2月22日、大船渡市魚市場

 2月19日、岩手県大船渡市の魚市場や水産加工団体、小売団体の幹部が緊急招集された。浜の復興状況を視察に訪れた谷合正明農林水産副大臣に「直訴」するためだった。

<「重大な岐路」>
 水産都市大船渡の業界幹部たちは、厳しい表情で国際漁獲規制の厳守や北朝鮮漁船団による違法操業取り締まりの強化を迫った。
 「東日本大震災から復興再生の道を進まんとする途中、三陸沿岸水産業関係者は、かつて経験したことのない現状に困窮し、重大な岐路に立たされている」
 手渡した「緊急要望書」に添付したデータが、事態の深刻さを物語る。
 「サンマ50%」「スルメイカ50%」「サケ68%」。全国の2012〜14年の3年間と比べた15〜17年の魚種別水揚げ割合だ。
 主力魚種の不漁が続く大船渡市では、17年の魚市場の総水揚げ量が約3万4000トンにとどまり、震災前年の10年から31%減少。12年以降で最低を記録した。
 その分、浜値は高騰する。本州一の水揚げを誇るサンマをはじめ、スルメイカやサケも単価は10年時点に比べて2倍以上。特にサンマは型が小さく、割高感が増す。
 冷凍冷蔵施設をようやく復旧した地元水産加工業者は「高騰した分を売値に転嫁するにも限界がある。イワシなど他の魚も激しい買い付け競争で価格が上がり、利幅が少なくなっている」と嘆く。

<代替種に活路>
 代替魚種を扱ったり、野菜加工に参入するなどして懸命に活路を模索する水産加工業者もいる。
 森下水産は震災後に新工場を建設、生産能力を増強した。稼働率を向上させるため、比較的資源量が安定している近海サバを使った加工品の開発に取り組む。
 ただノルウェー産が食卓を席巻して久しく、販路は容易に広がらない。森下幹生社長は「漁場が大船渡から遠ければ、石巻や気仙沼より高い値段で買わないと船も来てくれない」と表情を曇らせた。
 被災した水産加工業者の多くは震災前と震災後の二重債務を抱えている。国が出資する震災事業者再生支援機構などの援助で債務は減ったものの、事業者によっては返済が迫っている。
 大船渡湾冷凍水産加工業協同組合の役員は「事業計画通りに復興できていない事業者がほとんど。返済期間の延長など長い目で支援してほしい。これ以上不漁が続けば、廃業も増えるのではないか」と訴える。
 三陸では先日、イサダ漁が解禁されて新たな漁期が幕開けした。運送、製氷など関連業者を含めて浜の生き残りを懸ける、正念場の年が始まった。(大船渡支局・坂井直人)



 被災地の水産業や農業は、壊れた施設の復旧が順調に進んだ。だが、施設が再建しても人手不足や新たな課題に直面し、震災を克服できない状況がある。第2部は1次産業の現場で震災7年の課題に迫る。


2018年03月09日金曜日


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