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<回顧3.11焦点>漁船がない! 宮城で1万2000隻が大破・流出 メーカーに注文殺到

新船の建設が急ピッチで進む造船所。震災後、注文が増えている=2011年12月2日、宮城県気仙沼市浪板の木戸浦造船

 東日本大震災による津波で宮城、岩手両県を中心に数多くの漁船が大破、流失した。9割近い1万2000隻余りの漁船が被災した宮城県では、震災後の新規登録は約800隻にとどまる。大手メーカーや地場の造船所が急ピッチで建造を進めているが、膨大な需要に追い付かない。漁業者は漁船の確保に苦慮している。(肘井大祐、神田一道)

<新登録は800隻>
 水産庁によると、震災で大破、流失した漁船は全国21都道県で計2万5014隻に上る。県別では宮城の1万2029隻が最も多く、岩手の9673隻が続く。
 震災前、宮城県での登録漁船は1万3770隻。被災漁船は87.3%に達する計算だ。このうち20トン未満の小型漁船の被害は1万2005隻と大半を占めた。
 同県によると、3月11日の震災後、新たに登録した漁船は約800隻(2011年11月末現在)。漁業関係者からは「まだ、漁船の絶対数が足りない」(県漁協幹部)との声が漏れる。漁船不足のため、一部地域では冬のアワビ漁を取りやめるなど影響も出ている。
 漁船の価格は装備にもよるが、新造の場合、1トン未満の和船で約200万円、4トン級ではその10倍程度になることもあるという。

<購入費を支援>
 国は漁船の購入への支援策として、新造、中古漁船の購入費の3分の2を国と都道府県で負担する事業を設けた。本年度補正予算で計約395億円を計上。2011年度中に申請し、12年度までに完成した船が対象で、期間中に1万隻程度を調達する見通しだ。
 宮城県では11月、漁船購入の受け皿となる施設保有漁協が3地域に発足。漁協が漁船を購入し、組合員に貸与して共同利用する。年内中に3漁協合わせて500〜600隻を取得するという。
 事業の後押しもあり、メーカーには新船建造の注文が殺到している。
 ヤマハ発動機(静岡県磐田市)は震災後、約4000隻の新船建造を請け負った。7月から本格的に建造を始め、13年3月までに全て完成させる方針だ。
 同社の年間の建造船数は約200隻(10年)。「従来の態勢ではとても建造が追い付かない」(同社広報)として、退職者を中心に160人を増員し、約3億円の設備投資を行った。
 10月には宮城県村田町に、漁に必要な漁具などを漁船に取り付ける菅生艤装(ぎそう)センターを新設し、被災地に向けた出荷を急いでいる。

<従業員も不足>
 被災地の造船所も、故障船の修理や新船建造に追われている。
 主に養殖に使う5トン前後の漁船の建造を手がける大勝造船(宮城県南三陸町)は震災後、町内外から約30隻の修理、約20隻の新船建造を請け負った。
 4月中旬から町内の仮設工場で業務に当たる。従業員は13人。千葉勝司社長は「仮の工場は効率が悪く、手いっぱい。従業員を増やさないと注文をこなせない」と話す。建造の工程は13年3月まで埋まっている。千葉社長は「国の補助事業はいつまで続くか分からない。13年度以降の注文は受けられない」と言う。
 国内でも有数の大型漁船基地、気仙沼市でも新船の建造が進む。
 同市の木戸浦造船は現在、200トン級のサンマ船3隻を建造中で、来夏までの完成を目指す。木戸浦雄三社長は「同時に3隻を造るのはめったにない。工場が被災し、フル稼働できないが、早く建造して漁業再開につなげたい」と語る。=2011年12月7日河北新報
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 東日本大震災の直後から、被災地で暮らす市民の課題を取り上げた河北新報連載「焦点」。震災7年の節目に、発生翌年までの主な記事をまとめました。
=肩書や年齢は掲載当時のものです。=


2018年03月11日日曜日


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