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<震災遺構>保存か解体か 岩手・大槌町旧役場庁舎 遺族ら複雑な思い

保存か解体かで揺れる岩手県大槌町の旧役場庁舎。朝から大勢の人々が慰霊に訪れた=11日午後2時46分

 東日本大震災の津波で当時の町長と職員の計40人が犠牲になった岩手県大槌町の旧役場庁舎前には11日、朝から大勢の人々が祈りをささげに訪れた。旧庁舎の解体方針を表明している平野公三町長は午前8時すぎ、町職員約30人と共に黙とうし「解体は悲惨な事実を覆い隠すことでも、つらい記憶を忘れることでもない」と述べた。震災が発生した午後2時46分には、遺族らが犠牲者を悼んだ。読経した僧侶の一人で、拙速な解体に反対する「おおづちの未来と命を考える会」の高橋英悟代表は「庁舎があれば津波の脅威を子どもたちに伝えられる」と語り掛けた。町は開会中の3月定例町議会に解体予算案を提出する予定。可決されれば、命日に旧庁舎前で冥福を祈る機会は今年が最後となる。

 屋上付近まで津波の爪痕が残る旧庁舎の前で、犠牲者の冥福を祈る人々に思いを聞いた。
 町職員の長女=当時(26)=を亡くした釜石市の小笠原吉子さん(65)は「見ると苦しくなるが、娘が生きていた証しを感じられる場所。二度と悲劇を繰り返さないため、旧庁舎を残してほしい」と願った。
 町職員の母=当時(58)=が犠牲になった大槌町の40代女性は「復興は着実に進んでいると心の中で伝えた。旧庁舎の維持費は将来の負担になる。解体してほしい」と静かに語った。
 かつて応援職員として町に派遣された大阪府河内長野市職員の乾法道さん(44)は「大学生の時に神戸市で阪神大震災に遭い、知人を亡くした。関西でも阪神の記憶は風化している。(東日本大)震災を象徴する建物なので残してもいいのかなと思う」と被災庁舎を見上げた。
 町内の仮設住宅で暮らす女性(22)は「旧庁舎が残るときれいな町づくりの妨げになる。壊しても写真や動画で思い出すことはできる」と解体を望んだ。
 初めて町を訪れた東京都の大学生森口憲さん(20)は「解体される可能性があると聞いて訪れた。ここまで津波が来たというのが信じられない」とつぶやいた。
 仙台市太白区の中島佳子さん(60)は旧庁舎近くの実家が流失し、両親を亡くした。「旧庁舎のある景色は子どもの頃から慣れ親しんでいた。ボロボロになった姿を見るとさみしいが、古里の記憶を思い出させてくれる場所でもある」と複雑な胸中を明かした。


2018年03月12日月曜日


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