福島のニュース

<震災7年>異例の一線署勤務も全日本選手権に出場 人との出会い情熱復活「諦めるな」

子どもたちの稽古相手を務める原田六段=5日、福島県いわき市高久小

 未曽有の災害は多くのアスリートの人生を変えた。剣道の原田賢治六段(37)は、東京電力福島第1原発が立地する双葉署に勤務しながら、東北を代表する剣士として活躍する。宮城・古川工高バレーボール部に在籍していた高橋禎弥(ともや)さん(18)は、親族を亡くした悲しみを乗り越えて競技に打ち込み、昨秋の国体で上位進出を果たした。(山本武志)

◎福島県警双葉署 剣道 原田賢治六段

 原田六段は昨年11月、全日本剣道選手権で参加者中最多となる12度目の出場を果たした。震災発生時は機動隊員として人命救助や行方不明者捜索に当たった。現在は管内住民の多くが避難している双葉署に勤務しながら競技を続けている。
 伊達市生まれ。神奈川・桐蔭学園高、筑波大で活躍した後、福島県警の警察官となった。県警の剣道特別訓練員として数々の大会に出場している。
 円熟期を迎えていた昨年、転機が訪れた。4月から双葉署への異動が決まった。全国レベルの警察官剣士は機動隊に属するのが一般的で、一線署勤務は異例だ。「驚いた。真っ先に剣道ができなくなると思った」。着任後は練習場所も相手も満足に確保できない。人けのない町のパトロールや窓口業務など不慣れな業務に追われ、剣道への情熱も失いかけた。

 同じ境遇の剣士が窮地を救った。広島県警から福島に派遣されている大谷和弘六段(35)から稽古相手を頼まれ、5月から再び竹刀を握った。最初は乗り気ではなかったが、広野町の体育館で剣を交えるたびに熱意がよみがえってきた。
 「腐りかけていたが、大谷さんとの出会いが以前の自分を取り戻させてくれた。剣道の神様から『まだ諦めるな』と言われているようだった」
 全日本選手権の予選まで1カ月を切っていたが、挑戦を決意。勝ち抜いて全国切符をつかんだ。選手権は1回戦で敗退したが、「さまざまな方々の支えがあってこの場に立てた」と周囲に感謝する。
 4月からも双葉署に勤務する。地域の子どもたち向けの剣道教室にも力を入れている。「剣道や警察業務を通じて少しでも地域に明るさを取り戻せる一助になるなら、ここに来た意味がある」。剣を構えた時のように真っすぐなまなざしで語る。


2018年03月12日月曜日


先頭に戻る