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<点検・再始動 復興の理想と現実>生活基盤(1)宮城・女川の災害公営住宅 完成に時間 空き発生

計86戸の災害公営住宅「女川住宅」。3割弱の空き室が発生している=宮城県女川町

 宮城県女川町のJR女川駅西にある災害公営住宅「女川住宅」。6階建て、3階建ての集合住宅型2棟計86戸のうち、24戸(1月末現在)が空き室だ。半数が埋まらないフロアもあり、駐車場の空きも目立つ。
 「当初は10世帯ほどしか住んでいなかった。ぽつりぽつりと増えてきたが、この先、埋まるかどうか」
 昨年8月、仮設住宅から移った木村勝道さん(74)は気をもむ。女川住宅を核とする新設自治会「女川北区」の設立準備会長を務める。入居者が少なかったため作業は遅れ、今年1月、ようやく初会合を開いた。
 町内の災害公営住宅は今月末で全859戸が完成する。住宅整備が最終盤に入る中、入居予定者の辞退が相次ぎ、空き室が生まれた。なぜか。

<気持ちが変化>
 町の町民生活課は「完成まで時間がかかったことに尽きる。その間、被災者の環境が変わり、別の再建方法を選んだ」と説明する。
 大量の建設が急務だった一方、高台に宅地を確保するため、山地を切り開いた。固い地盤に阻まれ、工事は時間を要した。
 町は2011年と12年の2度の意向調査に基づき、945戸の建設を計画した。14年の事前登録で2割弱が減り、戸数を縮小。それでも、結果的に過剰だったことになる。
 女川住宅近くに昨年、自宅を再建した町議酒井孝正さん(71)も当初は災害公営住宅に申し込んだ。仮設住宅暮らしが長引くにつれ、「40代で自分の家を持った。このまま終わりたくない」と気持ちが変化した。
 辞退者の多くは仙台市や石巻市に就職先や就学先が決まり、町を去った人たちだ。現在の町の人口は約6600。震災前から3分の1減った。

<財政の重荷に>
 空き室の発生は町財政の重荷になりかねない。家賃収入を得られず、自治体の維持管理費がかさむ。町は「人が住まないと傷みも早い。今は黒字だが、国の補助がなくなれば、経年劣化によるコストが増す」と懸念する。入居者が少なければ自治会活動が停滞し、衛生面や防犯面で問題が生じることも危惧される。
 空き室解消のため、町は2月、入居対象を被災者以外に広げる一般募集を始めた。町外から移る若年層の単身者も認め、人口流出を補う考えだ。ただ、空きが埋まっても、ソフト面のケアは欠かせない。
 災害公営住宅に詳しい東北学院大地域共生推進機構の本間照雄特任教授は「一般募集が空き室を単に埋める施策で終わってはならない。被災していない入居者を含めたコミュニティーづくりに一層の支援が求められる」と指摘する。
(報道部・庄子晃市)
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 災害公営住宅や学校など公共施設をはじめ商店街、バスといった「まち」を構成する生活基盤は、被災者の暮らしの復興に欠かせない要素だ。復興への道のりは長い。施設は整っても、さまざまな環境変化によって新たな課題が生じている。


2018年03月14日水曜日


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