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<大槌町旧庁舎解体>「保存と解体、どちらが良かったのか…」人口1割犠牲の町、住民に埋め難い溝

旧役場庁舎解体関連予算案の採決を見守る町民ら=15日、岩手県大槌町役場

 東日本大震災の津波で、当時の町長と職員の計40人が犠牲になった岩手県大槌町旧役場庁舎の解体方針が15日、決まった。「これで胸のつかえが下りる」と安堵(あんど)する町民がいる一方、拙速な解体に懸念を示す住民団体は法的手段も辞さない構えだ。震災発生から7年。人口の1割が犠牲になった浜の町で、住民の間に埋め難い溝が残った。
 解体関連予算案の審議が行われた本会議場では、町民約20人が採決の行方を見守った。議員の賛否は可否同数。議長裁決で解体予算が可決されると、傍聴席の一部から拍手が起きた。
 旧庁舎で働いていた町職員の兄=当時(30)=が行方不明という会社員倉堀康さん(34)は、傍聴席で静かに目をつぶり、大きく息を吐いた。
 「7年間も争ってきたが、決断するにはちょうどいい時期だった。町民のストレスになる庁舎そのものがなくても、震災の教訓を伝えていくことはできる」
 住民団体「おおづちの未来と命を考える会」が提出していた旧庁舎の取り扱いについて熟慮を求める請願は、関連予算案の採決に先立って不採択となった。
 考える会は、議会手続きの適法性を争う住民監査請求や解体工事差し止めの仮処分申請も視野に今後、弁護士らと協議するという。
 会代表の僧侶高橋英悟さん(45)は「私たちは後の世代に試されている。採決が可否同数となったことは重い。まだ結論を出すべきではなかった。このままでは町民が二分されたままになってしまう」と語った。
 自営業倉本正勝さん(73)は「予算が可決された以上、もう後戻りはできない」。その一方で「保存と解体のどちらが良かったのか、正直まだ判断が付かない」とつぶやいて傍聴席を後にした。


2018年03月16日金曜日


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