宮城のニュース

<学び、再び 仙台自主夜間中学の今>(1)不登校を乗り越えて 一歩ずつ自分変える

歴史の教科書を広げて授業を受ける豊田さん

 義務教育を十分に受けられなかった人が学ぶ夜間中学。仙台市に市民団体が運営する仙台自主夜間中学があり、さまざまな年代や入学動機の生徒が集う。国は2017年3月、各都道府県に最低1校の公立夜間中学の設置を促す指針を発表した。東北にはなく、設置に向けた機運が高まる。なぜ夜間中学に通うのか。彼ら彼女らの人生を通して、学び直しの意味や夜間中学の必要性を考えた。(報道部・八巻愛知)

<ゆっくりでいい>
 36歳の時、小学生向けの国語のテキストを書店で買った。1ページ目は反対語の問題だった。「明るい−暗い」「新しい−古い」。このレベルなら分かる。学び直しの第一歩を踏み出そう。
 仙台自主夜間中学に通う青葉区の豊田哲さん(39)=仮名=。長い文章を読むのが得意でなく、中学の授業についていけなかった。コミュニケーションが苦手で、不登校の時期もあった。中学校を卒業後、今は清掃員として働く。
 基礎の基礎から勉強をやり直したい。自分を変えたい。ずっと思いを胸に秘めていた。15年、自主夜間中学のポスターを目にする。「これだ」。好きなペースで勉強できる場所を見つけた気がした。
 先生は自分の特性を理解してくれる。2月下旬、理科の授業で慣性の法則を学んだ。配られたプリントに目を落とす。数分で文字を追えなくなってしまう。「長文が読めません」。先生は「ゆっくりでいいよ」とうなずいてくれた。
 コミュニケーションの取り方はまだぎこちない。自習中に周りのうるささに腹を立て、机をたたいて怒鳴ってしまったことがある。そっと近づいてきた代表の中沢八栄(やさか)さん(74)に「隣の部屋なら静かに自習できるよ」と諭してもらった。

<行事に積極参加>
 時々つまずきながらも、少しずつ前へ。「豊田さん、こんにちは」と、よくあいさつしてくる年配のクラスメートがいる。こちらもあいさつを返す。「緊張はするけど、前より人と話ができるようになった」
 嫌な思いをした中学時代に一つだけ心残りがある。クラスになじめず仮病で休んだ東京への修学旅行。行きたかったと今でも思う。
 自主夜間中学にも行事がある。遠足、芋煮会、クリスマス会…。どれも積極的に参加する。修学旅行もこんなふうに楽しかったのだろうか。取り戻したいものは学びだけではない。
 高校入学か高卒認定の取得が今の目標だ。「簡単なことからでいい」。そう言い聞かせ、周囲に支えられながら自分なりの歩幅で進む。通い始めて丸3年になる。週1回の授業は一度も休んでいない。

[メモ]仙台自主夜間中学は2014年発足。ボランティア団体が月4回程度、仙台市内2カ所で授業をする。自主夜間中学は任意団体が運営し、中学卒業の認定は得られない。東北では仙台市のほか、福島市にある。公立夜間中学は義務教育で授業料はかからない。平日は毎日授業があり、中卒認定を受けられる。


関連ページ: 宮城 社会

2018年03月21日水曜日


先頭に戻る