Feature特集

2018.03.15号掲載

深〜い関係

日本酒と器

新酒が出そろい、日本酒党にとってうれしい季節が巡ってきた。日本酒の味わいを引き立てるのに欠かせないのが酒器。お酒と器の相性について、専門家に聞いた。(よ)

香りの影響を抑える小さい穴と、楕円(だえん)の2つの口から味わいを飲み比べできる「すぃ猪口」


春を感じる柔らかな色合いの片口と猪口。仙台の陶芸家加藤晋さんの作品

燗酒気分を演出するスズ製や銅製のちろり


 グラス、平杯、猪口 

香りと味 様変わり

※酒匠
日本酒と焼酎のテイスティング専門家として、日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会(SSI)が認定する資格。「唎酒師(ききさけし)」の上位資格で難易度が高く、高度なテイスティング能力を必要とする。

佐々木一実店長。「蔵元さんが酒に込めた思いをお客さまに伝えられるよう心掛けています」

日本酒と器の関係についてアドバイスしてくれたのは「仙臺居酒屋おはな」(青葉区)の店長で、「酒匠(さかしょう)」の資格を持つ佐々木一実さん。


佐々木さんによると、日本酒は大まかに①香りが華やか(大吟醸酒・吟醸酒系)②爽やかでライト(普通酒・本醸造酒系)③しっかりこくがある(純米酒・生もと系)④熟成感が強い(長期熟成酒・古酒系)―の4タイプに分けられるという。

「店では、できるだけ酒の特長を引き立てるような酒器を使ってお客さまに提供しています。例えば…」と佐々木さんが手にしたのは、オーストリアのワイングラスメーカー「リーデル」が蔵元らと協力して開発した「大吟醸グラス」。ボウル形状の膨らみ方や口への流れ込み方が、大吟醸の華やかな香りを際立たせるよう計算されているそう。

3種類で味比べ

「なるほど」と感心していると、佐々木さんが「同じ酒でも、酒器を変えると味の感じ方が変わりますよ。テイスティングしてみましょうか」と、材質と形の異なる3タイプの酒器を用意してくれた。

日本酒好きとはいえ、ただの飲んべえの自分に違いが分かるだろうか。心もとないながらもまず、先ほどの大吟醸グラスで飲んでみる。「おやっ?」。口元に近づけただけで爽やかな香りが立ち上る。味わいもフレッシュな印象を受けた。

次に平杯で飲む。香りはほとんどしないが、グラスより酸味や柔らかな甘みなどを感じた。「酒器の口径が広いと舌の上に酒が広がり、複雑な味わいが楽しめます。燗(かん)酒にも向いていますよ」(佐々木さん)

最後はプロが利き酒に使うことの多い「利き猪口(ちょこ)」。これも香りはほとんど立たない。3つの中では最も辛口に感じ、日本酒感が強かった。

基準を1つ持つ

器でこれほど味が変わるとは。知らずに飲んだら全て違う酒だと思ってしまいそうだが…。佐々木さんは「(自分の)基準とする酒器を1つ持ち、それでいろいろな酒を飲んでみると、酒そのものの個性を見極められるようになりますよ」とアドバイスする。

また、季節や気分、料理に合わせて酒器を選ぶ楽しみを提案する。「春らしい酒器で春限定の酒を飲んだら、その体験が酒の印象をより深めてくれます」

器でここまで楽しめるのは、日本酒ならではの魅力。皆さんもぜひ試してみて!

 

テイスティングに使った酒器3種。左から大吟醸グラス、平杯、利き猪口
テイスティングするライター。大吟醸グラスで「いい香り~」※あくまで仕事中です



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