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| 店が混み出す夜中には人生や恋愛の相談会(時に説教)になることも多いとか。マスターいわく、「アメリカのことわざに『悩んだらバーに行け』というのがある」(真偽のほどは分かりません) |
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半年以上も前だったか。飲んだ帰り道に通りかかった横丁で、聞こえてくる楽しげな人の声につい、のれんをくぐった店があった。それが「ゆきむら」である。
もつ煮と鉄板焼きの店だが、店の外に「浅草と沖縄を混ぜた韓国な店」「悩み相談承ります(ギャル語お断り)」なんて書かれていて、料理とは違った、人を誘う強烈なにおいを発しているのだ。
マスターの木村幸宏さんは、寅さんと俳優の中尾彬の物まねが得意な42歳。カウンターに座ると「ハイボールの意味とは」「ホッピーの正しい飲み方とは」を楽しげに語りだす。頼んだビール、そろそろください。「おっと、すまないね」。謝るときは中尾彬になるらしい。すっかり忘れていた風なのに、妙にかっこよく低音を響かせた。
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| 黒糖と泡盛でじっくり煮込んだラフテー(650円)は、もつ煮と並ぶ人気メニュー。食べやすいように薄切りにしてある |
つまみには目の前でくつくつと音を立て始めた自慢のもつ煮をいただく。そのうち「水曜日の住人たち」と呼ばれるこの日の常連さんが集まりだした。わいわいがやがや、勝手に楽しんでいるが、マスターの駄じゃれには全員で突っ込みを入れる。ホタテ貝を焼いた煙が店中に立ちこめると、みんな文句を言いつつ、入り口ののれんを上げたり、うちわで煙を追い出したり。下町ドラマでも見ているような感じだ。
新参者でもいつのまにか、そんな「木村家の人々」のペースに乗せられている。記者の座った入り口のカウンター席は、「乙女の席」と呼ばれているそうで、後ろ姿で男性客を誘い込む役目を仰せつかった(貢献できませんでしたが)。
そういえば初めて来たときも夜中に一人、チャンジャの茶漬けをかっこむ怪しい女を、お客さんともども陽気に迎えてくれたっけ。
ところでこのホタテ、最後に出たけどお通しだって? 「すまないね」 |