カンヌ国際映画祭報告2008

1.5月革命から40年 カンヌ映画祭開幕

2008/5/15

 第61回カンヌ映画祭が5月14日に開幕しました。今年は、パリで学生たちが中心となって起こした5月革命の余波でカンヌ映画祭が中止になった1968年から数えて40周年。その記念として、カルロス・サウラの「ペパーミント・フラッペ」や、グルノーブル冬季オリンピックを記録したクロード・ルルーシュの「白い恋人たち」など、68年に上映されるはずだった“幻のパルム・ドール候補作”の復活上映が組まれています。40年前、スクリーンの前に陣取って、映画祭の中止を叫んだ中心人物の一人、フランソワ・トリュフォーは既に鬼籍に入り、私が初めてカンヌに来たときは監督週間の上映に使われていた優雅な主会場も、今では取り壊されてノガ・ヒルトン・ホテルになりました。この40年で外見的には著しい変化のあったカンヌですが、肝心の中身の方、映画の心は、変わらず熱く、真摯であって欲しいと願っています。

 さて、オープニングを夜に控えた14日の午後、審査員の記者会見が行われました。今年の審査委員長はショーン・ペン。写真はそのときのもので、ドイツの女優アレクサンドラ・マリア・ララ(左)とフランスの女優ジャンヌ・バリバールに挟まれたショーン・ペン審査委員長です。彼らの背後に見える、目隠しをした女性の写真はデヴィッド・リンチの手になる今年のポスター。審査員は他にナタリー・ポートマン、「ペルセポリス」のマルジャン・サトラピ、アルフォンス・キュアロンら。アジアからタイのアピチャッポン・ウィーラセタクン監督が加わっています。

 今年のコンペティション作品の特徴は、まずアジア映画が、中国・韓国・日本というおなじみのトライアングルが崩れて、中国・フィリピン・シンガポールという変わったラインナップになったことと、パブロ・トラペロ、ルクレシア・マルテル(共にアルゼンチン)、フェルナンド・メイレレス、ウォルター・サレス&ダニエラ・トーマス(共にブラジル)と南米が4本をコンペに入れてきたこと。彼ら新興勢力に対抗するのはクリント・イーストウッド、ダルデンヌ兄弟、ヴィム・ヴェンダースらのベテラン勢。さて、ショーン・ペンはどちらに軍配をあげるでしょうか。

筆者紹介

齋藤敦子さん  映画評論家。パリで映画編集を学んだ。フランス映画社宣伝部から90年にフリーとなる。G・ノエ、グリーナウェイの諸作品を字幕翻訳。  最新作は「麦の穂をゆらす風」。「ピアノ・レッスン」(新潮文庫)「奇跡の海」(幻冬舎文庫)「パリ快楽都市の誘惑」(清流出版)などの翻訳書も。