カンヌ国際映画祭報告2008

6.百歳のオリヴェイラ監督に賛辞

2008/5/21

 19日の午後、ポルトガルの巨匠マノエル・デ・オリヴェイラ監督へのパルム・ドール名誉賞授与式が主会場リュミエール・ホールで行われました。今も活発に創作活動を行っているオリヴェイラ監督は、今年12月で百歳の誕生日を迎えます。会場には翌日コンペでの上映を控えたクリント・イーストウッドや審査員長ショーン・ペンも姿を見せ、参加者全員がスタンディングで世界最高齢の現役映画監督を讃えました。

 写真はそのときのものです。写真(上)は左からティエリー・フレモー、オリヴェイラ監督、映画祭プレジデントのジル・ジャコブ、「家路」や「夜顔」で主演したフランスの名優ミッシェル・ピコリ。写真(下)は左がクリント・イーストウッドです。

 ジル・ジャコブからの祝辞を受けて、オリヴェイラ監督は、「一番若いとは言わないが、私はまだまだ若い監督の一人です。100年の人生のうちの78年で映画を作ってきましたが、ある意味で映画が私を成長させてくれたのです」と挨拶しました。

 一度見たら忘れられない、強烈なインパクトを持った映画を見ました。コンペで上映されたブリヤンテ・メンドーサ監督の「サービス」です。舞台はフィリピンの地方都市にある家族経営の古びた映画館“ファミリー”。ポルノ映画が上映されている映画館には毎日ゲイや怪しげな人物たちがたむろし、場内の暗がりやトイレである種の“サービス”が提供されている、というもの。ストーリーらしいストーリーのないこの映画の並外れているところは音の使い方。建物の外のノイズが登場人物の会話を覆い隠すほどの大音量で絶え間なく響いているのです。猥雑な人間たちの生態に不快感を感じる前に、騒音に精神をかき乱されてしまいます。

 普通の映画では、撮影時にマイクがノイズを拾ってしまわないよう極力注意を払うものですし、編集の際には必要な音がきちんと聞こえ、いらない音が入らないようミキシングの作業をします。この映画はまったく逆で、ノイズの音量をわざと高めているように思えるほど。ノイズと共生している人間たちの姿こそ、メンドーサ監督が描き出そうとしたフィリピンの現実なのかもしれません。

筆者紹介

齋藤敦子さん  映画評論家。パリで映画編集を学んだ。フランス映画社宣伝部から90年にフリーとなる。G・ノエ、グリーナウェイの諸作品を字幕翻訳。  最新作は「麦の穂をゆらす風」。「ピアノ・レッスン」(新潮文庫)「奇跡の海」(幻冬舎文庫)「パリ快楽都市の誘惑」(清流出版)などの翻訳書も。