デスク日誌

当事者

 「自然界にある物質全てを人間が管理、コントロールすることはできません」
 中学の3年間、理科を教えてくれた女の先生の言葉だ。1974年9月、原子力船むつが放射線漏れを起こした直後の授業だった。
 先生は政治的な発言はしない人だった。教職員組合とも距離を置いていた。普段は物静かなだけに、熱っぽく語る姿が意外だった。
 3月25日の読書面の1冊「近代日本一五〇年」。著者は元東大全共闘代表の山本義隆氏。駿台予備校の講師として長らく物理を担当し、誠実な授業に定評がある山本氏は、科学技術の進歩への無批判な礼賛に警鐘を鳴らす。先生が力説したあの言葉を思い出した。
 青森総局を離任したY記者が「(原発問題に青森県は)当事者意識を持って向き合ってほしい」(3月25日ワイド東北)と書いた。電源開発大間原発差し止め訴訟に関連してだが、県民の自分にも向けられたように思えてドキリとした。
 41年前の卒業式で、先生は「将来、理科やりへっ(理系に進みなさい)」と激励してくれた。はかま姿だったのは東京女子高等師範学校の伝統だろうか。毅然(きぜん)とした立ち姿も思い出した。
(青森総局長 長内直己)


2018年04月15日日曜日


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