デスク日誌

国士舘物語

 読み返すたびに染みる。栗山圭介著「国士舘物語」(2016年3月刊行、講談社)。本の帯のうたい文句通りの「熱くて泣ける」濃密な人間模様の青春記だ。
 小説には青森の中学で1学年上の先輩だった斉藤仁氏の名前も出てくる。柔道の強豪・国士舘高から国士舘大に進んだ斉藤氏は、ロサンゼルス、ソウル五輪を連覇。全柔連強化委員長だった15年1月、肝内胆管がんで死去した。54歳だった。
 03年の大阪での世界柔道の会場で見掛けたのが最後になった。男子監督として教え子の鈴木桂治選手と話し込んでいた。ひと言「元気ですか」と声を掛ければよかった。悔いている。
 小説は当時の体育会の独特な上下関係も描く。15歳で上京して耐えた斉藤氏に内情を尋ねたかった。「稽古に夢中で覚えていない」とかわされると思うが…。
 9月9日、斉藤氏の次男立(たつる)選手(国士舘高2年)が全日本ジュニア体重別選手権100キロ超級で初優勝した。得意の内股は父親譲り。五輪を目指すと言う。
 終章の一節。「懐に仕舞い込んだ拳は人生の難所をクリアするたびに小さく握ればいい。それさえあれば人生は上々だ」。同感だ。
(青森総局長 長内直己)


2018年10月12日金曜日


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