デスク日誌

大冷害

 あぁ、もう四半世紀も前のことなのか。若手の原稿に手を入れていて、つくづくそう思った。
 原稿にあったのは「やませ」の言葉。福島県浜通り地方で、五穀豊穣(ほうじょう)や無病息災を祈る神楽や田植え踊りなどの民俗芸能が盛んな理由に関して触れていた。
 原稿を見ていて「歴史の教科書を読んでいるよう」と感じた。東北の太平洋側には現代でも、やませが吹き寄せるが、ニュースになるのは「猛暑」の方がはるかに多い。若手には、冷たく湿った東風がもたらす大冷害は歴史上の話でしかないのかもしれない。
 25年前は岩手県南の千厩町(現一関市)に勤務。隣の川崎村(同)で大規模経営に乗り出したコメ農家の若い男性を取材していた。年間を通じたルポは大冷害で内容を変更。もみに実が入らない不稔(ふねん)といもち病で壊滅的となった現状を紹介することになった。
 その後は深刻なコメ不足とタイ米の輸入などが報道されたが、何より記憶に刻まれているのは水田を覆う冷たい霧の風景だ。底冷えする異常な夏が二度とないとは絶対に言えない。「つい最近のこと」として若手には伝えていこうと思う。
(福島総局長 安野賢吾)


2018年12月23日日曜日


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