デスク日誌

Jヴィレッジ

 東京電力福島第1原発事故に伴う休止を経て全面再開したサッカー施設「Jヴィレッジ」(福島県楢葉町、広野町)。色鮮やかな芝の上でボールを蹴る子どもらの掲載写真を眺め、近隣支局に勤務していた十数年前の出来事を思い出した。
 ジーコ監督率いる日本代表が初めて合宿するというので現地に向かった。訪れたファンに話を聞き、写真も撮った。監督のコメントがあれば記事は完成する。
 練習が長引き、「ぶら下がり」がなかなか始まらない。当時はパソコンで原稿や写真を送れず、締め切りに間に合わなくなる可能性があった。コメント抜きの記事でいいのか、それともぎりぎりまで粘るべきか。
 夕闇のグラウンド脇で悩んでいると、ジーコ氏が1人でジョギングしているではないか。学生時代、監督の母国ブラジルに滞在した経験があった。思い切ってポルトガル語で声を掛けた。
 「気に入ってますか?」「はい」。もう一言欲しい。「それでどうですか?」「とてもいい」。けげんな顔をしながら甲高い声で応えてくれた。短いコメントに仕立てた。ポルトガル語が取材で役立ったのは後にも先にもその一度きりだ。
(整理部次長 大友庸一)


2019年05月16日木曜日


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