デスク日誌

風景の記憶

 名取市閖上の「かわまちてらす閖上」と宮城県女川町の「シーパルピア女川・地元市場ハマテラス」を続けて訪れる機会があった。共に東日本大震災からの復興を担う商業施設である。
 木造建築が醸し出す優しい空間を散策し、買い物や飲食を楽しんだ。閖上はシラス、女川はホヤなど、特産物で個性を出す。オープンから3年が過きた女川の施設は整備も進み、おしゃれな雰囲気さえ漂う。
 観光で初めて訪れた人は、ここが被災地であることを頭で分かっていても、新しい施設の活気をそのまま受け入れることができるかもしれない。ただ、地元の人はどうなのだろうか。
 閖上は子どもの頃から親しんだ土地で、震災前の数々の記憶がある。今回、施設の裏手の堤防に立ち、河口へと悠々と流れる名取川を見た時、かつての街の光景がよみがえった。同時に、現在の姿との乖離(かいり)に、やるせない思いが募った。女川でも、駅前から海の方角を望めば同じ気持ちになる人はいるだろう。
 生まれ変わった街で生きる人々が、過去の風景の記憶とどう折り合いをつけていくか。そこに心の復興への鍵があると感じた。
(生活文化部次長 加藤健一)


2019年08月02日金曜日


先頭に戻る