デスク日誌

鬼の手形

 趣味と呼べるようなものは散歩ぐらい。そんな自分にとって、盛岡の町歩きは本当に心地よい。サケの遡上(そじょう)で知られる中津川沿いや盛岡城跡公園といった中心部だけでなく、桜並木に囲まれた高松の池などにも足を運んでいる。
 先日は「鬼の手形」の看板に誘われ、「三ツ石神社」の鳥居をくぐった。三つの大きな岩を見ながらリーフレットを手に取った。
 巨岩は、岩手山が噴火した際に飛んできたもので「三ツ石様」として信仰を集めていた。悪事を働く鬼がおり、困り果てた住民が三ツ石様に祈願すると、鬼は岩に縛り付けられた。「二度と悪さはしない」。おびえながら誓ったので、約束の印として岩に手形を押させて逃がした。
 この話は、県名の由来の一説だという。退散を喜んだ住民たちが感謝を込めて幾日も踊り続けたのが、「盛岡さんさ踊り」になったとも伝えられている。
 伝説を知ってから「岩手」という名前自体に不思議な力が宿っている気がしてならない。新型コロナウイルスの影響で、今夏のさんさ踊りは中止されることになったが、終息後の舞いを心待ちに手を合わせた。
(盛岡総局長 今野忠憲)


2020年05月12日火曜日


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