デスク日誌

安易な表現

 少し前、テレビの情報番組のCGアニメは、米国の人種差別の実態を解説する内容だった。筋骨隆々の黒人が登場し、白人との格差問題を荒っぽい言葉で主張。背景には混乱する街の様子が描かれていた。
 黒人はいかにも血の気が多く、社会の反乱分子のように見える作り。放映直後から「差別を助長する」「ステレオタイプ」と批判の声が上がり、放送局は謝罪する事態に追い込まれた。
 イメージとは怖いものだ。いったん刷り込まれると独り歩きする恐れがある。かつて外国映画で見た日本人の姿が思い浮かぶ。背が低く、眼鏡を掛け、小ずるい。ああ、日本人は外国人の目にこう映るのか、と複雑な思いだった。
 報道機関にとって安易な表現は命取りになる。例えば災害取材でも、被災者をひとくくりにして伝えてしまうと個々の違いが見えにくくなる。そもそも、現場に「被災者」という名前の人は一人もいない。
 複雑な事象を分かりやすく伝えようとする時、単純化のリスクが生まれやすい。意図的な偏向報道は論外だが、最もたちが悪いのは無意識のミスリード。失敗から学ぶことは多い。
(報道部次長 成田浩二)


2020年08月01日土曜日


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