デスク日誌

一億総白痴化

 通勤に使う東京メトロ銀座線の列車内で先日、少々不愉快な場面に遭遇した。
 開いたドアから乗車してきたのは、ステッキを持つ1人の女性。ロングスカートで隠れていたが、歩き方から左脚に固定具を着けているのはすぐに分かった。
 優先席と書かれたえんじ色のシートには既に、左右合わせて8人の男女が座っている。しかし、誰一人として席を譲ろうとはしない。いや、誰も女性に気付かなかったというのが正解だったかもしれない。
 全員がスマートフォンの画面を見詰め、器用なまでに指先を動かす。おおよそゲームの操作か、会員制交流サイト(SNS)への文字入力といったところだろう。列車の戸袋近くで揺られていた女性は、四つ目の駅で降りていった。
 「一億総白痴化」。60年余り前、社会評論家の大宅壮一氏が生んだ言葉だ。「テレビばかり見ていると、人間の想像力や思考力を低下させてしまう」と警鐘を鳴らし、話題になった。
 スマホという文明の利器は思考力どころか、周りへの注意力や気配りさえも奪った。かつての流行語は、今こそ当てはまるような気がしてならない。
(東京支社編集部長 末永秀明)


2020年11月22日日曜日


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