河北抄

 素朴な木目と曲線の美しさ、手触りのなめらかさ。リンゴをかたどった木工品の宝石箱に、しばし見入った。岩手県洋野町大野で「みのり工房」を営む林郷(りんごう)亨さん(39)の作品。仙台市太白区秋保町で先日あった手作り工芸市に出店した。
 「大野の木工品をもっと知ってほしくて」。食卓のわん、丼、サラダボウルなど、温かみのある木の器と一緒に並んだのが、リンゴの宝石箱。実の部分の真ん中から二つに割れる。キハダ、赤松、クルミと、素材の色の違いも楽しい。「私のオリジナルで一番人気なんです」
 北三陸の中山間地、大野地区(旧大野村)は昔、林業と出稼ぎの村だった。東北工業大教授だった故秋岡芳夫さんが地場産業興しを住民に提案。木工技術を、林郷さんの師匠の佐々木米蔵さん(昨年『現代の名工』に選出)らが学んだ。
 独特の乾燥、加工で生まれる木工品は丈夫さでも知られたが、工房は後継者不足で減った。「木取りから塗りまで一人で仕上げるのが大野の伝統。良さを各地の市で伝えています」。仙台にもなじみの客ができ、次の出店が楽しみという。


2018年05月17日木曜日


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