河北抄

 「表松島」と呼ぶ人もいる。点在する奇岩や海に突き出た「馬の背」「子馬」が絶景を成す。宮城県利府町がわずかに面する松島湾。内陸に住宅団地が広がる町の貴重な観光資源だ。
 表松島の玄関口、利府町浜田漁港の浜田カキ生産組合が今季の営業を始めた。生食用むきガキを直売、隣接する焼き処(どころ)で殻付きの蒸し焼きを振る舞う。
 浜田のカキ養殖は1960年代、松島湾の環境悪化などで途絶えた。前組合長の故桜井俊一さんを中心に、漁業者8人で復活したのが約10年後。桜井さんたちは安全でおいしい生食用を追求、養殖や蓄養方法に工夫を重ねた。浜田のカキのファンが県内外に育った。
 東日本大震災以前から過疎化、高齢化が進む浜田地区。今やカキ養殖の担い手は桜井さんの長男博之さん(54)だけだ。むき手の確保も容易ではないが、住民の力を借りて地元の特産を守る。
 松島湾の穏やかな波に揺られたカキは身がふっくら厚く、滋味に富む。空気のさえる季節、表松島の景色を眺めつつ、その恵みをかみしめたい。


2018年10月19日金曜日


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