河北抄

 音読してつっかえる文章は書き言葉としても不完全な場合が多い。新聞記事の書き方が、息長く読み継がれる詩の世界にも通じることを初めて知った。
 仙台市で9日にあった東北学院大特別講座「震災と文学」で、福島市在住の詩人和合亮一さんが自作の詩「牛と」を朗読してくれた。朗読と詩を書くことはほとんど一緒だとか。
 「牛と」は「北の大地に 穴を掘り 泣きながら 牛の乳を捨てた人よ」で始まる。最大震度7を記録し、41人が亡くなった昨年9月6日の北海道胆振東部地震の被災者に向けて書いたという。
 北海道でも福島でも酪農家は捨てるためだけに牛の乳を搾った。搾らなければ乳牛は乳腺炎で死ぬ危険性がある。全域停電、放射性物質と理由は違っても、出荷できたはずの原乳を捨てるつらさは同じだろう。
 「大地よ 空よ 故郷よ 胆振よ 北海道よ それでも 私は 牛と共に 生きる」。詩は「涙を しぼる」で終わる。詩人の朗読に耳を傾けながら、言葉を絞り出す覚悟の差にたじろぐ。


2019年02月19日火曜日


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