河北抄

 仙台文学館で先日行われた第2回仙台短編文学賞の授賞式に、第1回大賞の岸ノ里玉夫さん(59)=大阪府=の姿があった。「新しい文学の芽がどんどん広がっている。一緒に書き続けていきましょうという気持ちが湧きます」。1年ぶりとなる仙台の印象をそう語った。
 岸ノ里さんの受賞後第1作が、東北学院大発行の雑誌『震災学』第13号に掲載されている。関東大震災から7年後の1930年の大阪を舞台にした「七年」。映画監督の白井戦太郎や作家の谷崎潤一郎ら実在した人物を配し、災後の人間模様を戦前の微妙な空気感とともに描く。
 第1回受賞作「奥州ゆきを抄」は、東日本大震災から7年目に、関西から東北に鎮魂の奥浄瑠璃を届けようと心を砕く物語だった。岸ノ里さんには阪神大震災(95年)から7年後に三咲光郎名義で書いた「忘れ貝」(文芸春秋)もある。震災で親を亡くした少年と、息子を事故で失った女性との交流が胸を打つ長編だ。
 図らずもそろった「震災7年」3部作。作家の視線は、復興の大合唱の中に埋もれがちな一人一人の声を見据える。


2019年04月23日火曜日


先頭に戻る