河北抄

 俳人の松尾芭蕉が「奥の細道」の旅に出て今年で330年になる。門人の曽良と約5カ月かけて東北や北陸を歩いた芭蕉。その姿は、バックパッカーのはしりと言えようか。
 東日本大震災の沿岸被災地を歩いて支援する環境省の「みちのく潮風トレイル」があす9日、全線開通する。八戸市・蕪島−相馬市・松川浦をつなぐ一本道は、全長約1000キロに及ぶ。
 ルートを選定したのは、環境省東北地方環境事務所の桜庭佑輔さん(41)。高校、大学と山岳部で鍛えた健脚を買われた。リュックサックを背負い、長い時は約2週間のテント生活を送りながら、冒険心を満たすルートを探った。
 ロングトレイルは何日も、時には何カ月も自然の真っただ中を歩き続けるという。欧米では3000キロを超すトレイルがあり、最小限の装備で森や荒野を歩くバックパッカーを魅了している。
 芭蕉が折々に句を詠んだように、歩くスピードでしか見えない風景がある。1000キロの新たな「奥の細道」は、被災地の未知を知る手掛かりにもなる。


2019年06月08日土曜日


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