河北抄

 知り合いから勧められていた児童書を読んだ。小手鞠るい著『ある晴れた夏の朝』(偕成社)。米国のハイスクールの生徒8人が広島と長崎への原爆投下の是非を公開討論する物語だ。
 15歳の主人公メイは、アイルランド系米国人を父に、日本人を母に持つ米国籍の女生徒。「否定派」の一員として「肯定派」の4人と激論を交わす。
 多民族の国らしく、メンバーのルーツはさまざま。原爆に対する見解も多様だ。「罪もない一般市民が亡くなった」というメイに、中国系の生徒は旧日本軍による南京大虐殺を例に挙げ「中国人市民の犠牲者の方が多い」と反論。「ナチス・ドイツの同盟国を懲らしめて何が悪い」と強弁するのはユダヤ系だ。
 激しい主義主張の衝突を経て、8人の思考に変化が現れる。平和のため人類は何をすべきかという大命題に行き着く過程には、意見の違いを超えて話し合う大切さを改めて考えさせられた。
 この本はことしの青少年読書感想文コンクールの課題図書(中学校)になっている。若い読者の感想を聞いてみたい。


2019年06月15日土曜日


先頭に戻る