河北抄

 これぞ不屈の魂。1893年6月、ノルウェーの船が北極探検に旅立った。その名は「フラム号」。途中、シベリア沖で厚い氷に閉じ込められて3年間も漂流してしまうが、乗組員は危機を脱出して全員無事に帰った。
 名取市の閖上地区で復興をサポートしている一般社団法人「ふらむ名取」。1世紀以上も前の奇跡の航海から勇気を受け継ごうと名付けられた。代表の格井直光さん(60)たちは、1カ月おきに『閖上復興だより』を発行してきた。
 今月、55号を迎えた節目の紙面を飾ったのはもちろん、先月のイベント「まちびらき」。復興計画作りに3年以上もかかり、ようやくスタートラインに立てた住民の笑顔の写真が印象的だった。「これが復興というものか」と編集スタッフも感慨深げに記している。
 それでも、閖上で今暮らすのは約1200人。東日本大震災前の3割にも満たない。厳しい現実の壁が氷山のようにそびえている。「あせらず、少しずつ、前へ」と格井さんは言う。漂えども沈まぬ「フラム号」のように。


2019年06月18日火曜日


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