河北抄

 仙台市若林区荒浜には、四季折々の営みがあった。春は南東の風、イナサに吹かれての出漁、夏は海水浴場の海の家。そして秋は「まめげっつぁん」だった。
 「中秋の名月」の夜、枝豆を食べて月をめでるので豆名月。「つぁん」は敬称である。地下鉄東西線荒井駅にある「せんだい3.11メモリアル館」で今月13日、月見会があり、参加者は荒浜の名物料理、おくずかけを味わった。
 震災で被災し、近くに新居を構えた庄子智香子さん(66)が腕を振るった。お盆やお彼岸に欠かせなかったといい、大広間の仕切りをぶち抜いた座敷で一杯やる大勢の男たちを喜ばせたとか。
 ニンジン、ゴボウ、シイタケ、油揚げ、玉ふをそろえる。「サトイモとうーめんも入れたの。汁をかけると冷めないのがいいわね」と忙しく立ち回る。
 荒井駅の周りには家やマンションが建ち始めた。時折顔を出すお月様に見守られ、地域の子どもたちが走り回っている。この日の味が記憶に刻まれ、「母さん、荒浜の料理作ってよ」となって、いつまでも受け継がれてほしい。


2019年09月25日水曜日


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