河北抄

 上映中の『アイネクライネナハトムジーク』(今泉力哉監督)は、JR仙台駅前のペデストリアンデッキの光景に始まる。三浦春馬さん、多部未華子さんら人気俳優が彩る奇跡の出会いの物語。見慣れた街が全国のスクリーンに映るのは、不思議な気分で、どこか誇らしい。
 仙台市在住の伊坂幸太郎さんの同名小説を原作に、オール宮城ロケで撮影された。当地の作家には伊集院静さん、熊谷達也さん、佐伯一麦さん、瀬名秀明さんらもいる。層は厚みを増し、仙台には作家が暮らす街、文学が生まれる街というイメージが備わりつつある。
 仙台文学館の赤間亜生副館長は「20年前の開館当時は考えられませんでした」と振り返る。かつて仙台は後の大作家にとっての「青春の通過点」だった。東北学院で英語を教えた島崎藤村しかり、東北大医学部に学んだ北杜夫さん、仙台一高出身の井上ひさしさんしかり。
 地元に縁深い書き手が東京ではなく、ここに根を下ろして創作する。現代文学の香りゆかしき杜の都。こんなシティーセールスがあってもいい。


2019年09月26日木曜日


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