河北抄

 6日に閉幕した仙台クラシックフェスティバルで、左手のピアニスト、舘野泉さん(82)の公演を聴いた。
 17年前に脳出血で倒れ、右半身が不自由になった舘野さんは、世界各国の作曲家に左手のための作曲を委嘱し、新たな音楽の世界を切り開き続けている。
 今回、アルゼンチン出身のパブロ・エスカンデが、松尾芭蕉の三つの俳句をモチーフにした新作を演奏した。どれも短くて、1曲目は緩やかに何かが始まりそうな予感をさせる。2曲目は跳ねるような、リズムミカルな音が印象的。もしや<古池や蛙飛びこむ水の音>? 3曲目はスケール感があり、それでいてどこか物寂しげ。<夏草や兵どもが夢の跡>だろうか。知っている句を思い浮かべ、勝手に曲の解釈を楽しんだ。
 小泉八雲の怪談を題材にしたフィンランドのノルドグレン作『振袖火事』も、江戸を焼き尽くした明暦の大火が浮かぶようなエネルギーがほとばしっていた。異国の作曲家が見いだした日本文化の世界観がとても新鮮だった。来年も舘野さんが奏でる音楽の魅力に浸りたい。


2019年10月09日水曜日


先頭に戻る