河北抄

 1人の書家の業績とは思えぬ多彩さに驚く。8日まで仙台市青葉区のせんだいメディアテークで開かれている河北書道展特別顧問の書家、故大友青陵さん(本名茂、岩沼市)の個展。
 人の背丈より長い赤の画仙紙3枚に、隷書で書いた「高青邱詩(こうせいきゅうし)」。約2500の平べったい文字が規則正しく並ぶ様は、見ていて気が遠くなる。「幸田露伴紀行文」は、岩沼市や宮城県亘理町方面を訪れた露伴が竹駒神社を参拝した場面を抜粋した。境内に立った作家の旅情が伝わってくるようだ。
 大作、力作に隠れるように飾られた1点に目が留まった。高橋悦朗の詩「ありがとがす」。東日本大震災の津波被災地で、泥かき作業に携わるボランティアに向けた感謝の言葉。「ありがとがす ありがとがす…」。文字を追っていくうちに、作業する背に手を合わせ、涙する被災者の姿が目に浮かんでくる。
 新型コロナウイルスの流行が止まらない。世の中全体が深く沈み、例えようのない不自由さを感じている今、大友さんならどんな書をしたためただろう。


2020年04月06日月曜日


先頭に戻る