河北抄

 「おっ、河北さん。懐かしいなあ」。東京高裁前で2018年3月、建設アスベスト(石綿)訴訟の控訴審判決が出るのを待っていたら、社名入りの腕章を見た70代の原告男性に声を掛けられた。
 仙台市出身。東京の建設現場で石綿を吸い込み、健康を害したという。訴訟は国や建材メーカーが安全対策を怠ったとして首都圏の元労働者や遺族計354人が起こした。高裁は国の責任を認めた。
 原告は、日本の高度経済成長を建設現場から支えた人々だ。出稼ぎや集団就職で東京に来た東北出身者もいる。同様の訴訟は08年から全国で相次ぎ、原告は1100人を超える。
 長く空白区だった東北でも、被害者が声を上げた。元労働者ら計9人が今月26日、国やメーカーに2億3100万円の損害賠償を求め、仙台地裁に提訴する。
 原告弁護団の太田伸二弁護士(仙台弁護士会)は「東北は支援や情報が少なく、被害が潜在化した」とみる。石綿は多くの建築資材に使われ、私たちの生活にも深く関わる。原告の訴えに耳を傾け、石綿禍を「わがこと」として考えたい。


2020年08月24日月曜日


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