河北春秋

 おふくろの味が忘れられて、「袋の味」が幅を利かせている−。大崎市岩出山で農事会社を経営する早坂正年さん(37)が嘆く。袋の味とはレトルト食品のこと。おいしいが、何かが足りないと感じていた▼愛知県出身。全国の名産品をカタログ販売する仕事を経て、奥さんの実家に婿入りした。「何か」を教えてくれたのは、地域の祝いに各戸が持ち寄る家庭料理だった。煮物とか、だし巻き卵とか。素朴だが、命を養ってくれるものの深い味わいがあった▼農業を支えるのは水。大崎市鳴子温泉から岩出山、石巻市までの、江合川の水が育んだ農水産物でフルコースを作ろう。古里の安心安全な食材を、最高の鮮度で用いる。それが地産地消のあるべき姿ではないか▼先月、東鳴子温泉の「旅館大沼」に東京からの団体客を集め、オードブルの宅配サービスを初めて行った。名付けて「農ドブル」。ご飯は会場で炭火炊きした。岩出山特産の竹細工など、器にも凝ってみた。おふくろの味は装いを改め、皆を笑顔にした▼早坂さんが思い描くのは地域の未来だ。素泊まりの湯治文化が残る鳴子に農ドブルレストランを開きたい。旅館にこもる宿泊客を外に誘い出せれば、通りがにぎわいを取り戻す。農業者も元気になる。そんな展開を夢見ている。(2018.7.12) 


2018年07月12日木曜日


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