河北春秋

 奄美大島(鹿児島県)には日本のゴーギャンと呼ばれる画家田中一村(いっそん)の美術館がある。入り口ではまばゆい光にアダンの実がオレンジ色に輝き、葉は陰影濃く揺れる。絵にはその明暗と、風の気配が確かにある▼来館者が記した「一村さんへの手紙」には老若男女、念願の思いがあふれる。「(直行便のある)鹿児島まで2度来たが台風に阻まれ、三度目の正直でようやく来られた。感無量」との文も▼気仙沼市のリアス・アーク美術館は、美術への関心を高めようと懸命だ。副館長の山内宏泰さん(47)は震災後、主催する絵画展に小中学生の応募が激減したことを危惧する。「前ばかり向いても真の復興は果たせない。物事を深く見詰める芸術的視点が必要なのに」▼考えた末、手持ちの収蔵品で企画展を開いた。これなら入館無料にできる。美術とは何かを伝える説明文とパンフレットに力を注いだ。風は見えるかと問い「風は見える。故に描くことも造形することもできる」と、心の目で事象を見る大切さを説いた▼地域にゆかりの深い画家の作品など約50点を展示、かつての気仙沼の風景を伝える。建物や道路の復興が進む古里の過去と未来、失ったものと希望。三陸の光と風と共に、当地で「見て」ほしい。企画展は26日までと残りわずか。(2018.8.24)


2018年08月24日金曜日


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