河北春秋

 津波に流される人と助けようとする人。赤い血が流れ、痛々しい。東日本大震災の発生時、小学2年だった児童が心のケアの一環で「あの日おぼえている光景」をテーマに作った紙粘土のジオラマだ。名取市閖上の津波復興祈念資料館「閖上の記憶」に飾ってある▼館内に犠牲になった中学生の遺品などの資料が並ぶ。震災を記録した映像を流すシアタールームも設置。年間約1万5000人が見学に訪れる。説明するのは地元のボランティア。渡辺成一さん(68)はその1人だ▼震災当時、町内会の自主防災組織の責任者を務めていた。防災訓練は毎年実施したが、「牡鹿半島があるからここまで津波は来ない」などと過去の経験から思い込んでいた▼閖上地区では約800人の死者が出た。「大津波警報が出たら、一刻も早く安全な場所に逃げるという基本的な話を地域全体でしていなかった」と悔やむ。次の世代に自分たちと同じ失敗を繰り返してほしくない。そんな思いで3年前から語り部をする▼最近は台風、地震などの災害が相次ぐ。「津波に限らない。どこに住んでいても自然災害が起きる可能性はある。自分が住む地域がどんな歴史をたどり、今の姿になったかを調べてほしい」と渡辺さん。今日も命の尊さ、防災の大切さを訴えている。(2018.9.13)


2018年09月13日木曜日


先頭に戻る