河北春秋

 目を見開き、大きな口に白い牙と赤い舌。幅6メートルの幕に描かれたオオカミの迫力に目を奪われた。南相馬市小高区の神社の例祭で124年前から飾られてきたという。「東北のオオカミ信仰を伝える品だ」と宮城県村田町の歴史みらい館専門員、石黒伸一朗さん(60)▼5月に現地で目にし、同館で開催中の「再び、オオカミ現(あらわ)る!」展で初公開した。恐ろしいがユーモラスな木像やこま犬、護符などが並ぶ。この3年間で調査に歩いた東北6県の110カ所余りで、オオカミをまつる神社や社、石碑を確認した▼日本のオオカミは明治期、薬物駆除や伝染病で絶滅したとされる。「東北に信仰が広まったのは江戸時代。生態系の頂点にあり、農作物を害獣から守る頼もしい神だった」。海辺の町では漁業の守り神にもなった▼猫の信仰があったのは同県丸森町。養蚕が盛んで、蚕を狙うネズミの天敵として「猫神」の石碑がまつられた。石黒さんは同町で猫神を調べた8年前、見たことのない動物の石碑を見つけた。オオカミとの出合いだったという▼「信仰が今も生きる土地は少なくない」と言う。秋田県の調査では、神社が老朽化で壊れた後、住民が公民館で祭壇を守り続けているのを知った。「東北に眠るオオカミをもっと掘り起こしたい」。19日まで。(2018.12.14) 


2018年12月14日金曜日


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