河北春秋

 国語の教科書にも載る名句<水枕ガバリと寒い海がある>の作者は興俳句を代表する俳人西東三鬼。作家では異色の青春小説「旅の重さ」で知られる素九鬼子さん。どちらも名前に鬼が付く▼鬼一法眼(陰陽師)、鬼太夫(刀工)、善鬼(剣豪)らは伝説的な人物だが、実生活上でも、鬼沢さんや鬼塚さんなど「鬼」の字が付く名前の人にお目に掛かるのは、珍しくない。最近の有名どころだと、シンガー・ソングライターの鬼束ちひろさんがいる▼日本人にとって、鬼はおぞましい存在ではなく、畏怖すべきスーパーパワーとして意識されてきたことを示す証左だろう。先月、国連教育科学文化機関(ユネスコ)が、男鹿のナマハゲや吉浜のスネカ(大船渡市)などの鬼神に、お墨付きを与えた▼異界から来て災厄を払い、福をもたらす彼らは「来訪神」として世界の無形文化遺産となった。ナマハゲなどは教育にも熱心だ。「親の言うごと聞くがー」とすごんでみせれば、子どもらは「いい子にします」「約束します」と、半泣きでひれ伏すしかない▼真夏や秋に現れる鬼神もいるが、大概は大みそかから小正月にかけてが書き入れ時だ。神として広く認知された誇りを胸に、腕をぶして出番を待つ。貧困、病気、差別…。打ち払うべきものは多い。(2018.12.16)


2018年12月16日日曜日


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