河北春秋

 <一戸建 手が出る土地は 熊も出る>。バブル景気時代の1990年、第一生命保険の企画「サラリーマン川柳」で詠まれた句である。3年後の出品作は<御取り引き バブルはじけて お引き取り>。川柳は世相を反映する▼アベノミクスで株価が上昇した近年はどうか。2014年の作品は<小遣いの 異次元緩和 未(いま)だなし>。サラリーマンの悲哀は変わらない▼茂木敏充経済再生担当相が12年12月から続く景気拡大期間が今月で73カ月に達し、00年代の戦後最長記録と並んだ可能性が高いと表明した。始まりはアベノミクスの開始とほぼ同じ。来月まで続けば最長になるが、実感がないサラリーマンが大半ではないか▼厚生労働省の調査によると、昨年の物価の影響を考慮した実質賃金は減った。社会保障の負担は増大。財布のひもは固い。そんな中、麻生太郎財務相は賃金が上がらない状況について「上がっていないと感じる人の感性の問題」と発言した。庶民感覚と無縁の人なのだろう▼アベノミクスを麻薬のモルヒネに例える有識者もいる。モルヒネは痛みを抑える一方、副作用が伴う。政治学者の中島岳志さんは「漢方薬で10年、15年かけて体質改善することが大切」と語る。モルヒネを使いすぎて感覚がまひしないか心配になる。(2018.12.21) 


2018年12月21日金曜日


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