河北春秋

 思い出した場面がある。1972年の札幌五輪。70メートル級ジャンプで金メダルを取った笠谷幸生さんには、90メートル級でも優勝の期待が懸かった。1本目は2位。逆転を狙った2本目は風にも邪魔され、力んだジャンプが失速。名選手のまさかの7位だった▼重圧を克服して完璧に飛ぶ「心・技・体」と併せ、一瞬の風も味方にする運もないと勝てない。そんなジャンプ競技で最高峰の大会が、年末年始に欧州で催される「ジャンプ週間」だ。強豪らが1週間で4連戦し、総合点を競う▼本紙の「完全優勝」の見出しに心が躍った。八幡平市出身の小林陵侑選手(岩手・盛岡中央高出)が、今季のジャンプ週間で全勝優勝の快挙を達成した。1本のミスが勝負を左右するし烈さで、優勝はゴルフ、テニスの「グランドスラム」に等しい偉業という▼古里で5歳からスキーを始め、数々のジュニア大会で優勝。葛西紀明選手が率いるチームにスカウトされた。兄の潤志〓選手と共にワールドカップ、昨年の平昌五輪で経験を重ね、ついに才能を開花させた▼心の強さに驚いたのは、ジャンプ週間の4戦目。1本目を4位で終え、優勝へ重圧が懸かった2本目に伸び伸びと逆転の大ジャンプを決めた。3年先の北京五輪まで、新世代のエースはどこまで高く遠く飛ぶか。(2019.1.9) 

(注)〓は郎の旧字体


2019年01月09日水曜日


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