河北春秋

 伊達政宗は風邪気味だと感じると、すぐに休養したという。小さなことにも用心した人だった。敵の城下の民家には容赦なく火を付けた。1人でも生かしておくと、いつかは復讐(ふくしゅう)されると考えたのだろう。「小事から大事は発する。油断してはいけない」と語った▼政宗の言葉とよく似た言葉が老子にもある。同様の意味のことわざは世界各地に伝わってきた。「大きな堤防も蟻(あり)の穴で崩れる」(朝鮮)、「小さな原因、大きな結果」(フランス)などがそう。些細(ささい)なことをおろそかにするな、という戒めは今も説得力がある▼小事が大事に至った典型的な例である。厚生労働省の毎月勤労統計の不適切調査問題。対象だった東京都内の事業所のうち、3分の1しか調査しなかった。発端は担当者が忙しかったためか。それとも怠慢だったのか▼統計を基に算定された雇用保険の失業給付などの過少支給対象者は延べ1973万人、総額は537億円に上った。統計は政府の経済指標に使われ、最も基本となるデータ。行政への信頼は大きく揺らぐ▼同省は問題を1年前から把握し、組織ぐるみの隠蔽(いんぺい)との指摘がある。猛省はもちろん、原因を徹底究明し、洗いざらい説明してもらわないと、国民の怒りは収まらない。小事を怠った代償はあまりに大きい。(2019.1.12) 


2019年01月12日土曜日


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