河北春秋

 東松島市の宮戸島に、貞観地震(869年)を記録したとされる古碑がある。風化しているが、「大地震の折は碑より高台に逃げろ」と地元に伝わり、東日本大震災では伝承通りにして住民が助かった。「貞観の碑に感謝」と彫られた新しい石碑が傍らに立つ▼岩手県普代村の普代水門、大船渡市の津波記念石、相馬市の津神社。過去の大津波の教訓や先人の知恵が、震災で生きた場所が被災地に点在する。多くの命を守った学校などの遺構もある▼それらを結び、祈りと学びの道をつくる運動がある。相馬市でNPO活動をする新妻香織さん(58)が提唱した「東北お遍路プロジェクト」。8年前から被災4県の住民や首長、民俗研究者や宗教者と協働し、これまで63カ所の巡礼地を選んだ▼自宅のある浜の街は津波で流され、原発事故も重なった。「被災地に再び人を呼ばないと復興はできない。ひらめいたのが、お遍路さんの道」。それは慰霊と防災伝承の旅になり、来訪者との交流が地元を活気づける▼巡礼地の写真・俳句コンテスト、マラソン大会も催し、ガイドブックも1巻出した。「100カ所の巡礼地選定を目指し、被災地をつなぎたい」。津波で同級生を4人亡くし、「残された分、しっかり働いて」と天国から励まされている思いという。(2019.3.10) 

 


2019年03月10日日曜日


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