河北春秋

 石巻市の美術教室「アトリエ・コパン」に小さな絵が飾られている。教室を開く新妻健悦さん(71)を描いたイラスト。ポーズを取り、笑っている。「みつま先生 2011年よろしく!!」という文字が添えてある。当時8歳の女の子が描いた▼3歳年上の兄らとともに、東日本大震災の津波の犠牲になった。「彼女には『にいつま』が『みつま』と聞こえたのでしょうね。みつま先生と呼ばれていました」と新妻さん。2人とも教室が大好きだった▼震災では教室の子どもの大半が被災した。家族や友人を失った子、自宅を流された子…。ずっと飼い犬の帰りを待ち続ける子がいた。首都圏の学校に進学したが、震災に無関心な周囲とのギャップが大きすぎて津波体験を語れず、苦しむ子もいた。震災から8年。多くが高校、大学生や社会人になった▼今は石巻と仙台の教室で小中高生約100人が学ぶ。震災の実感がない子どもが大半。被災した子に対しては、そばにいてそっと見守る▼昨年、教室で「無人島に何を持っていく?」と聞いた時、ある女の子が野菜の種と答えた。子どもたちは前に向かってたくましく生きようとしている。「強く、諦めず、誠実にやり遂げる大人に育ってほしい」と新妻さん。美術はきっとそんな大人になるための力になる。(2019.3.11) 


2019年03月11日月曜日


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