河北春秋

 雲間からのぞく青空の下、集まる笑顔の人、人、人。真新しいスタジアムとその周辺は祝祭の空間と化していた。8年前を思えば、こんな日が訪れると誰が想像できただろう▼釜石市の釜石鵜住居復興スタジアムで初めて行われたラグビーの国際試合。9月に幕を開けるワールドカップ(W杯)日本大会の前哨戦は、日本が格上のフィジーに快勝し約1万3000人のファンを沸かせた▼釜石市は、1978年度から日本選手権を7連覇し、その強さから「北の鉄人」と呼ばれた新日鉄釜石(現釜石シーウェイブス)の本拠地。ラグビー界にとって釜石の名は今も特別である。東日本大震災の津波により1000人を超す死者・行方不明者を出した。スタジアムは復興の象徴として、全壊した小、中学校の跡地に建てられた▼日本国籍を取得しているリーチ主将は試合前日、被災した釜石で日本代表が試合をする意義をチームメートに説いたという。外国人選手も含め全員が高い使命感を持ってグラウンドに立ち、被災地を勇気づけた▼ラグビーの祭典本番まで2カ月を切った。釜石でも2試合がある。スタジアムの傍らに「あなたも逃げて」と刻まれた津波防災祈念碑がある。世界から訪れた人との交流はもちろん、教訓を発信する機会となればいい。(2019.8.2)


2019年08月02日金曜日


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